無断キャンセルで損害賠償請求ができる法的根拠と具体的な手順を解説

2022.09.27

近年話題になっている無断キャンセル(No Show)に対し、損害賠償を請求する事例も増えてきました。中には被害を受けた周辺のお店と連帯し、裁判の申立てを行うケースもあります。

今年1月、栃木県那須塩原市などの8宿泊施設で無断キャンセルをしたとして、被害に遭った8施設が、予約した千葉県柏市のキャバクラ経営者の女性と男性従業員2人に280万円の損害賠償を求めていた裁判で6日、宇都宮地裁大田原支部で和解が成立した。

和解内容は、女性経営者が月20万円の分割払いで今月から14カ月かけて弁済するというもの。
(引用:朝日新聞DIGITAL)

損害賠償は必ずしも裁判を通して請求する必要はありません。

この記事では、お店側が知っておきたい無断キャンセルに対し損害賠償を請求できる法的根拠や方法、損害賠償額などについて紹介します。

無断キャンセルのキャンセル請求は弁護士に相談!回収までの具体的な対応

無断キャンセルに対し損害賠償が請求できる法的根拠

予約が無断キャンセルされた場合、店側は予約者に対し損害賠償を請求することができます。これは、予約を一方的に放棄することが契約の不履行に該当するからです。

第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 債務の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

引用:民法第415条

ネットからの予約はもちろん、口頭や電話での予約も完了時点で契約が成立するため、無断キャンセルされれば損害賠償が請求できます。

損害賠償請求はキャンセルポリシーを設定していなくてもできますが、その場合にはお店側が発生した損害について立証しなければなりません。

法的に有効なキャンセルポリシーの書き方|業種別キャンセル料の決め方

無断キャンセルの損害賠償の内訳と損害賠償額

損害賠償を請求した際の内訳や金額はどうなるのでしょうか。

ここでは、無断キャンセルの損害賠償で請求できる金銭について紹介していきます。

無断キャンセルで請求できる損害賠償の内訳

無断キャンセルでは材料費や席代、人件費などの損害が発生します。

しかし、これらすべての損害を請求できるわけではありません。無断キャンセルされても、人件費や固定費などは他の客に転用できてしまうからです。

なお、無断キャンセルでは慰謝料請求は基本的に認められないので注意してください。

無断キャンセルで請求できる損害賠償額

無断キャンセルに対する損害賠償は、キャンセルによって生じた平均的な損害額までとなっており、これを上回る金額は無効になる可能性があります。

コースなどの金額が明確になっているケースでは、基本的に全額を請求することが可能です。そのため、3,000円のコース2人分の無断キャンセルに対して請求する場合、6,000円の損害賠償が受け取れます。

席だけの予約などコースなどの明確な金額のない場合、そのお店の平均的な客単価から算出していきます。

無断キャンセルの損害賠償を請求する方法と手順

無断キャンセルを請求する際、最初から裁判をするわけではありません。

ここでは順を追って請求方法について紹介します。

無断キャンセルに関する証拠集め

予約者へ損害賠償を請求する前に、まずは無断キャンセルに関する証拠を集めましょう。

証拠が手元にあることで、相手に「予約していない」「キャンセルの連絡を入れた」などと言い訳をされた時でも泣き寝入りせずに済みます

また、裁判に発展した際に証拠が必要になるため、先を見据えて集めておくことが重要です。

集めておくべきものは、予約完了の文章やキャンセルの連絡をもらっていない通話履歴やメール受信履歴、予約者へリマインドした際の記録になります。

予約内容や方法によって必要な証拠が変わりますので、予約に関する情報をできる限り集めておくと安心です。

予約者へ無断キャンセルに対する損害賠償請求を行う

証拠が集まったら、予約情報をもとに予約者へメールで無断キャンセルに関する損害賠償を請求します。

予約者に対し憤りを感じている人もいると思いますが、文句などは記載せず必要最低限の内容で作成することが重要です。

メールに反応がない場合は電話で催促することになりますが、言い方によっては脅迫に該当してしまう可能性もあります。

そのため、電話で催促する際は「メールを確認したか」「いつ対応できそうか」とメールを確認して、対応してほしい旨を伝えましょう

また、後々「脅迫された」と言われないためにも、音声を録音しておくことが重要です。

無断キャンセルに対する損害賠償請求メールの記載例

損害賠償を請求する際の催促に関して、厳密なルールはありません。

予約者にわかりやすいように、以下の内容を記載します。

  • 請求相手と自分の名前
  • 請求の内容
  • 予約内容や請求金額
  • 支払い方法・振込先
  • 支払い期限

●年×月△日
●●様

○○会社
サービスセンター

【重要なお知らせ】

いつも○○をご利用いただきありがとうございます。

●年●月●日のご予約に関して、当日連絡がないままご来店いただけなかったため、キャンセルポリシーに則り、ご予約の○○コースの料金100%(●円)を下記口座までご入金お願い致します。

○○銀行 ●●支店
普通口座
口座番号 000000000
名義 ○○会社

●年〇月〇日までにご入金が確認できない場合、法的手段をとらせていただくことがございます。

至急ご確認の上、対応くださいますようお願い申し上げます。

相手の対応が期待できない場合は、支払い期限に延滞金を記載しておくのもおすすめです。

内容証明郵便で損害賠償金の督促を行う

メールで催促しても対応してくれない場合は、内容証明郵便で請求しましょう。

内容証明郵便は郵便局が宛先や差出人、記載された内容について証明してくれる郵便方法です。

裁判などで「請求されていない」と言い逃れできなくさせると同時に、時効の成立阻止にも効果があります。

内容証明郵便は、手紙の原本を持参し郵便局で手続きを行うか、ネット上で作成するかを選べます。

窓口の場合、1枚520文字から利用でき文字数が少ない場合にお得です。一方で、ネットは1枚1,500文字から利用でき窓口で申請するより約260円お得に利用できます。

文字数からお得な方を選んでください。

裁判により損害賠償金を回収をする

内容証明郵便で督促を行っても、対応されない場合は裁判を検討しましょう。

請求金額が60万円を下回る場合、一般的な裁判より費用や手続きの少ない少額訴訟を利用できます。裁判費用は請求額や請求人数によって変わりますので、裁判所で確認してみてください。

裁判で無断キャンセルの損害賠償請求をする際の注意点

裁判により無断キャンセルの損害賠償請求をする際に、いくつか注意しておきたいことがあります。裁判で損をしないためにも検討前に確認しておきましょう。

裁判を申し立てても回収が難しいケースもある

判決により損害賠償請求が認められたからといって、必ずスムーズに回収できるわけではありません。

相手に支払い能力がないケースや、相手が裁判に出頭せず第一審で判決が決まってしまったケースでは回収が難しくなります。

特に相手が裁判に出頭しないケースでは、相手に支払う気が一切ないため回収が困難になるでしょう。

強制執行による財産の差し押さえも考えられますが、相手の就職先や使用している銀行を調べるために裁判とは別で費用や時間がかかってしまいます。

裁判を行う際は、相手が支払いに応じようとしているかなどの対応を見つつ弁護士とよく相談して進めていくことが重要です。

請求金額によっては費用倒れする可能性がある

裁判では手数料の他に、弁護士への相談料や依頼料など費用がかかります。

そのため、10万円以下の損害賠償請求では、費用倒れする可能性が高いでしょう。

請求するメリットとデメリットを比較しながら、本当に裁判を行うのかを検討してみてください。

弁護士のサポートが必要になる

裁判による損害賠償請求では、請求の法的根拠の記載や法律に則った損害賠償の算出が重要になります。

また、裁判時のやり取りで不利な立場に追い込まれないためにも、弁護士のサポートが必要です。費用を削減したいからと自分で対応すると、獲得できたはずの損害賠償を獲得できなくなってしまうリスクがあります。

自分でなんとかせずに、まずは債権回収が得意な弁護士へ相談してみてください。

損害賠償請求の心強い味方になってくれるでしょう。

まとめ|簡単にキャンセル料を回収するなら

無断キャンセルが発生した後に損害賠償を行うのは、キャンセルポリシーがあっても大変なことです。金額が小さいと費用倒れになる可能性がありますし、請求の手続きは会社経営の時間を削ります。

しかし、一方的な無断キャンセルに対し泣き寝入りをしたくないのは当然です。

どのような業界でもしっかり無断キャンセル料を回収するなら、事前決済システムを導入してキャンセル料を前払いで確保しておくことをおすすめします。

事前決済システムというと費用や手間がかかりそうなイメージを持つ人もいると思います。ですが、プリチェックスであればお店のパソコンやタブレット、スマートフォンなどに導入できるため、初期費用を抑えることが可能です。

また使い方も簡単で、システムの指示に従い予約者情報を入れて送るだけで事前決済をすることができます。

無断キャンセルで損をしたくない人やストレスを抱えたくない人はぜひプリチェックスへお問い合わせください。費用など詳しいことについて紹介します。

この記事を書いた人

プリチェックス編集部

キャンセルによる売上をお支払いする「PRECHEX(プリチェックス)」を運営しています。再来店マーケティングやピンポイント集客も自動で行えます。予約を必要とするすべてのサービス運営者様に役立つコンテンツを発信しています。

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