キャンセル料の支払い義務と免責されるケース|支払わない客への対処法

2022.08.03

予約の際、キャンセルポリシーのキャンセル料の支払いに同意したにも関わらず、いざキャンセル料を請求すると拒否する人は多くいます。

「支払う義務はない」「支払いたくない」と頑なに支払いを拒否され困っている経営者も多いのではないでしょうか。

実際は席だけの予約であっても無断キャンセルをされた場合、客には損害賠償としてキャンセル料の支払い義務が生じます。

この記事では、 お店側が知っておくべきキャンセル料の支払い義務の法的根拠や支払わない客への対処法、いくらまで請求できるのかなどについて紹介します。

なお、キャンセル料にも時効がありますので、請求を検討している人は早めに対応するようにしましょう。

キャンセル料の支払いは義務?例外として免責されるケース

ここではキャンセル料の支払いが義務である法的根拠と例外として免責されるケースについて紹介します。

キャンセル料の支払いは義務?

ネットや予約サービスの普及により予約が簡単になったことで、予約を客側の都合で変更できる法的縛りのないものと考えている人も珍しくありません。

しかし、予約はれっきとした契約で、手続きが完了した時点で客には原則として予約内容を履行する義務が生じます。無断キャンセルにより契約が履行されなかった場合、民法第415条に基づきお店側は客に損害賠償(キャンセル料)を請求できます

(債務不履行による損害賠償)

第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 債務の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

引用:民法第415条

無断キャンセルした事実があり損害賠償額が適切であれば、客はキャンセル料を支払う義務を負い、破産したとしても回避することはできません。これは席だけの予約や少人数での予約であっても、同様です。

キャンセル料の支払いが例外として免責されるケース

キャンセル料の支払いは義務ですが、以下のようなケースでは免責されます。

その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるとき

引用:民法第415条

「社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由」とは、一般的に見て客を責められない理由があった場合です。具体的には、身内の緊急事態や自然災害などが考えられます。

何が例外に該当するかは事情によって異なり、裁判では過去の判例やお互いの事情をもとに判断されます。

キャンセル料を支払わない客への対処法と注意点

キャンセル料の支払いに義務があっても、実際に客がスムーズに対応してくれるケースは稀です。ほとんどの人は支払いを拒否したり、連絡を無視したりして支払ってくれません。

ここでは、キャンセル料を支払わない客への対処法と注意点を紹介します。

キャンセル料を支払わない客への対処法

何度連絡してもキャンセル料を支払ってくれない客は、これ以上お店側から請求しても効果は期待できません。

そうなった場合は、早い段階で弁護士か裁判所を通して督促を行うことがおすすめです。

1番簡単なのは弁護士から督促状を送ってもらうことです。弁護士名義の封筒が家に届くことで、今まで反応のなかった相手が支払いに応じてくれることも珍しくありません。相手も弁護士の請求を無視して、裁判になってしまうのを回避したいと思うからです。

また、簡易裁判所に申立てを行いキャンセル料の支払いを認められれば、裁判所から相手に支払う旨の連絡を入れてもらえます。この制度を「支払督促」といい、支払いへの強制力はないものの督促が行われても支払われなかった場合、強制執行による財産の差し押さえを申立てることが可能です。

財産の差し押さえでは、銀行口座の差し押さえもしくは給与の差し押さえが可能です。銀行口座の差し押さえでは、差し押さえた口座の残高から直接回収できる手続きになります。

残高がなければ空振りになりますが、あれば一括での全額回収が可能です。必要なのは使用している銀行名と支店名になります。

給与差押えは、相手の会社に申立てを行い給与からキャンセル料分を回収する方法です。会社に給与差押えの通知がいくため、相手にとってはなんらかの借金があると会社に思われてしまう手続きになります。

こちらの手続きでは、相手の勤務先の名前が必要です。

キャンセル料を支払わない客の対応での注意点

キャンセル料を支払わない客と直接対応する際は、私情を挟まず冷静に対応することと、証拠を必ず残しておくことが重要です。例えば、電話で連絡を取る時はスピーカーにして会話を録音しておきます。

証拠を残しておけば後から「恐喝された」「脅された」などと主張された場合でも、否定することが可能です。

また、トラブルが発生している間は相手のSNSやお店の口コミに悪質な内容の投稿がされていないか定期的に確認するようにしましょう。不特定多数の人に見られることで、事実ではないことも事実として認識されてしまう可能性があるからです。誰も見ていないだろうと放置するのは絶対にやめましょう。

キャンセル料の請求の時効と成立する2つのパターン

キャンセル料には支払い義務がありますが、いつまでも請求できるわけではありません。

ここでは、キャンセル料の時効と時効が成立しているケースについて紹介します。

2020年4月1日以降の予約は予約日から原則5年

2020年3月31日までは、業種などによって時効の期間が決まっていました。民法改正によって2020年4月1日以降からはどのような内容でも、時効は原則5年です。

ただ、時効期間が5年もあるからと後回しにしてしまうと、連絡先が変わっていて探せなくなってしまう可能性があるでしょう。そのため、キャンセル料の請求を検討しているのであれば、早めの対応をおすすめします。

時効が成立2つのパターン

時効は、無断キャンセルから5年経過するだけで自動的に成立するわけではありません。

時効の成立には2つのパターンがあり、1つ目はお店側がキャンセル料を請求しないまま放置し10年経過したパターン。

2つ目は相手が時効期間を過ぎた後に、時効の援用といい「時効が成立したので支払いません」と主張する手続きを行ったパターンです。

どちらにも該当していない場合、数年前の無断キャンセルに対してもキャンセル料を請求できる可能性があります。気になる人は一度弁護士に相談することをおすすめします。

無段キャンセルに対するキャンセル料の上限

キャンセル料を請求する際には、上限に注意しなければいけません。請求しすぎてしまう場合、相手から返還を求められたり、認められない可能性があるからです。

ここでは、請求できるキャンセル料の上限や計算方法、特別な上限が設けられているものついて紹介します。

一般的なキャンセル料の上限

宿泊施設や飲食店、美容院などのキャンセル料の上限は「キャンセルで生じた平均的な損害額」と消費者契約法の第9条で決められており、これを超える部分に関しては無効となっています。

コースなどあらかじめ金額が決まっている予約では、コース料金の全額を請求できる可能性が高いでしょう。一方、コース料金が決まっていない予約の場合、その店の平均的な客単価から人件費や固定費など転用可能な費用を差し引いて計算していきます。

どの程度差し引くのかは業種や時期によって異なります。

特定商取引法で定められた上限

客単価が十万を超える高額な契約だったり、月額で支払い契約を結んだりする学習塾やエステなどの取引では、特定商取引法によってキャンセル料の上限が以下のように定められています。

1ヶ月以上継続し、サービスへの支払い総額が5万円を超える

サービス内容

キャンセル料

エステサロン・美容医療

2万円

2ヶ月以上継続し、サービスへの支払い総額が5万円を超える

サービス内容

キャンセル料

結婚相手紹介サービス

3万円

家庭教師

2万円

語学教室・学習塾・パソコン教室

1万5,000円

これを超える部分は平均的な客単価で会っても無効となりますので、注意してください。

キャンセル料を支払わない人は逮捕できる?

近年、悪質な無断キャンセル者を逮捕する事例を目にすることが増えました。キャンセル料の支払い義務があるにもかかわらず、対応してくれない人を逮捕してもらうことはできるのでしょうか。ここでは、無断キャンセルと逮捕について紹介します。

無断キャンセルで予約者を逮捕できるケース

無断キャンセルで逮捕されるケースには、主に2つのパターンがあります。

1つ目は、予約サイトのポイントやクーポンなどを不正に受けとることを目的に予約し、無断キャンセルするケースです。

電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕されたのは千葉県の男女3人で、一昨年11月、GOTOトラベル事業の利用で発行される宿泊代金の15%に当たる地域共通クーポンを不正に取得しようと宿泊予約サイトで国内6カ所の宿泊施設にウソの情報を入力し、合わせて17万9000円分の電子クーポンをだまし取った疑い。

警察によると、逮捕された3人は偽名を使って予約をし、当日に無断でキャンセルした上で電子クーポンだけを受け取っていたという。

引用:Yahoo!ニュース

2つ目は嫌がらせやいたずら目的に、大人数の予約を行い無断キャンセルするケースです。

2019年に起きた、同系列の居酒屋5店舗に対し合計75人分の予約を偽名で行い、無断キャンセルをして約51万円にのぼる損害を出した事件では、容疑者の男性が逮捕されました。

どちらのケースも元々予約を履行する意思がないことがわかります。キャンセル料の支払いをしないだけでは、警察に被害届を出しても事件性がないとして捜査してもらえず、逮捕してもらうのは難しいでしょう。

悪質な無断キャンセルで問われる罪

1つ目のポイントやクーポンを目的に予約し無断キャンセルをするケースは「電子計算機使用詐欺」に該当します。電子計算機使用詐欺とは、スマホやパソコンなどの電子機器を通して、嘘の情報を入力したり不正な指示を与え、財産的な利益を不法に得た場合に適用される刑法です。

これには罰金刑がなく、起訴されれば10年以下の懲役が課せられます。GO TOトラベルのクーポンが配布された時には、不正にクーポンを取得するために実際には行かない宿へ予約を行い無断キャンセルするケースが頻発しました。

2つ目の嫌がらせを目的に無断キャンセルをするケースでは「偽計業務妨害容疑」に該当する可能性があります。偽計業務妨害容疑は嘘をついて人を欺き、業務を妨害した場合に適用される刑法です。

大人数での予約や無断キャンセルは、本来は客を入れて売上を出せたところを妨害されるため、これに該当します。

まとめ

キャンセル料には支払い義務がありますが、だからといって無断キャンセルした客がスムーズに支払ってくれるわけではありません。

支払ってくれない相手にいつまでも対応していると時間が無駄になりますので、早い段階で専門家に相談してみることをおすすめします。

また、キャンセル料を今後しっかり支払ってもらうには、事前決済やデポジットをもらうなどの対応が必要です。そうすれば、無断キャンセルが発生した時に時間をかけて請求したり、お店の評価のために請求を我慢したりすることもありません。

プリチェックスは、会社のパソコンやスマートフォンなどに簡単に導入できる事前決済ツールです。使用料も決済額の10%と業界最安で提供しています。

キャンセル対策としてどのようなことができるのか、まずはお問い合わせください。

この記事を書いた人

プリチェックス編集部

キャンセルによる売上をお支払いする「PRECHEX(プリチェックス)」を運営しています。再来店マーケティングやピンポイント集客も自動で行えます。予約を必要とするすべてのサービス運営者様に役立つコンテンツを発信しています。

こんな記事も読まれています

閲覧数ランキング